旅行を通して学ぼう!なぜ箱根には岩が多いのか?
箱根を旅行していて、私がふと感じたこと。「なんか岩、多くない?」
たとえば強羅の人気スポット、強羅公園にも大きな岩がそこかしこにあります。強羅という地名の由来は、諸説ありますが「岩がゴロゴロしているから」が理由の1つだといわれています。
なぜ箱根には岩が多いのでしょうか?
今回は、箱根の岩石が豊富である理由について、箱根の地質の歴史や自然環境の特徴を学んでみましょう。
岩と地質というテーマで、どれだけの人が読んでくれるのか・・・
コラム「旅で学ぼう!」について
このコラムでは、各地へ旅行して私が感じた疑問や気づきをもとに、調べて得た学びを書いていきます。
旅は学び体験!学びを通して、旅をもっと有意義なものにしていきましょう!
箱根は火山活動の結果できた土地
箱根は関東地方の南西部、神奈川県に位置します。箱根山と呼ばれる山々は神奈川県と静岡県にまたがっています。
箱根という土地は、約40万年前から続く箱根山の火山活動の結果として形成されました。箱根山は、長い時間をかけて多様な火山岩や火山灰を生成し、箱根の独自の地形や自然環境を生み出しました。
箱根火山の歴史:岩が多いのは、箱根山の火山活動によるもの
火山活動は地表に岩石を生成します。箱根の観光地に大きな岩石が露出しているのは、箱根の火山が活発に活動してきた歴史のためです。
箱根の火山活動は約40万年前から始まりました。
約30万年前から約10万年前までは古期外輪山の形成期です。この時期には、大規模な噴火や溶岩流により、箱根の外周にあたる古期外輪山が形成されました。古期外輪山は、塔ノ峰、明星ヶ岳、明神ヶ岳、丸岳、三国山、大観山、白銀山などを指します。
約10万年前から現在までは、新期外輪山の形成期です。特に約6万年前の大噴火で新たな外輪山とカルデラを形成しました。現在の芦ノ湖は、この噴火によって生じたカルデラ湖が元になっています。新期外輪山は、箱根の中心部を取り囲むように位置し、浅間山、鷹巣山、屏風山などが含まれます。
(年代については研究中で、諸説あるようです)
箱根のシンボル 龍神の棲む芦ノ湖はカルデラ湖
箱根の山々や谷、湖は多くが火山活動によって形成されました。例えば、箱根のシンボルとも言える芦ノ湖は、約3,000年前の大規模な噴火によって形成されたカルデラ湖です。
3,000年前、火口丘の1つであった「神山」が巨大な水蒸気爆発を起こしました。山が大きく崩壊するほどの大噴火でした。この噴火による土石流が仙石原から流れていた川の水を塞き止めます。こうして元々あった小規模なカルデラ湖に水がたまり、現在のような大きな湖が形成されました。
芦ノ湖の周辺には、火山岩や火山灰が堆積しており、地質学的な観点からも興味深い場所です。現在でも活動している火山と自然環境を観察できる場として、研究者からも熱い視線が注がれています。
箱根神社に伝わる九頭龍伝説
芦ノ湖のほとりにある神奈川屈指の有名神社が箱根神社です。箱根神社には九頭龍伝説があります。
昔、芦ノ湖には悪さをしたり、水害を起こしたりして人々を困らせる毒龍が棲んでいました。奈良時代の終わりごろ、万巻上人というお坊さんが暴れる毒龍を鎮め、毒龍は龍神に姿を変えたのだそうです。以来、龍神は芦ノ湖に棲んで湖や箱根の土地を守っています。
日本では、自然災害はよく怪物や荒ぶる龍にたとえられます。憶測ですが、もしかするとこの悪さをする龍の伝説は、箱根火山の活動や災害の歴史、それに対する恐怖が元になっているのかもしれません。
パワーあふれる自然が、人間の信仰の形に大きく影響を与えるんですね。
芦ノ湖は本当に龍神がいそうな神秘的な雰囲気の場所です。私も大好きで、何度も訪れています。パワースポットとして常に人気なのも頷けます。
人間のエゴかもしれないけど、神様はずっと荒ぶらないでくれるとうれしい
効能がたくさん!箱根の温泉ももちろん火山のおかげ
また、箱根の温泉も火山活動と深い関わりがあります。地下深くに存在するマグマが地表の地下水を温め、それが温泉として湧き出るのです。
温泉地では、温泉水が岩石を溶かし、独特の鉱物成分を含むことがあります。これにより様々な効能が生まれます。江戸時代から湯治で有名な箱根。活発な火山活動のため、箱根の温泉は成分や効能が多様であるとされています。
美肌効果のアルカリ性の温泉、殺菌性の高い酸性の温泉、アトピーや皮膚トラブルへの効能がある硫黄泉など。種類がたくさんあります。
大人気の絶景スポット!仙石原のすすき野も火山と関係が
毎年秋になると、仙石原高原は一面の銀色のすすき野となり、多くの観光客を魅了します。SNSでも人気のフォトジェニックスポットですね。
仙石原高原も箱根火山の活動により、火山灰や溶岩流で覆われました。特に約3,000年前の噴火で形成されたカルデラ地形が、現在の仙石原の基盤となっています。
この火山活動で生成された火山灰土壌と湿地が、すすきが繁茂しやすい環境を作っています。仙石原では、江戸時代に茅葺屋根の「かや」を生産するためにすすきが植えられはじめました。すすきは日本家屋の茅葺屋根の材料として広く利用されていました。これが現在の広大なすすき高原へと繋がっています。
火山灰は水を保持しやすい!しかも箱根は湧き水も豊富。だから箱根は全体的に湿地帯なんですね。
箱根の火山は噴火する可能性がある?
ここまで読んできて、「箱根の火山はいつ噴火するか分からないのでは?」「危険なのでは?」と感じた方もいると思います。
箱根の火山は活発に活動を繰り返してきました。現在でも、噴火の可能性のある生きた火山(活火山)です。
しかし突然噴火する可能性は低いといわれています。噴火の前にはマグマや火山ガスの上昇、熱水の移動などの兆候的な現象が起こります。箱根町のホームページによると、現在の観測装置でそうした現象を事前に観測できるとしています。
ただ大涌谷周辺は活発な噴気活動を続けています。2024年、気象庁は箱根山に噴火警戒レベル1の噴火予報を出しています。噴火予報は5段階あり、レベル1は「活火山であることに留意」という段階です。
警戒レベルは低いですが、突発的な火山灰の噴出などに注意が必要です。
箱根を訪れるのが不安だという方は、気象庁のホームページをチェックしてみましょう。
箱根の火山と岩について、もっともっと知りたいんだ!という人は箱根ジオミュージアムへ
箱根ジオミュージアムは、箱根の火山活動と地質に関する情報を提供する博物館です。火山や地質にまだまだ興味がある方、箱根の自然について知りたい方はぜひ訪れてみましょう。
住所 | 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1251 |
営業時間 | 9:00~17:00(最終入館は16:30) |
料金 | 大人:500円、子供:250円、未就学児無料 |
アクセス | 箱根湯本駅から箱根登山バスで約30分、仙石案内所下車すぐ |
まとめ
箱根には多くの岩石が存在し、その理由は火山活動によるものでした。また、火山活動は箱根の自然環境や植物に密接に関わっていることが分かりました。次に箱根に行くときは、箱根の岩や火山が作った自然環境にぜひ目を向けてみてください。
ポケモンでいうと、岩タイプと火タイプ(もしくは岩+火タイプ)が多い土地ということかなと思いました。実際に赤・緑・青で箱根をモデルにした説もあるようです。あと湿地だから草+水。たぶん伝説のドラゴンタイプもいますね。